新月の夜、常夜灯もない真っ暗なサーフ。手元すら見えない状況で、あなたはルアーボックスを開き、ヘッドライトの光を当てて悩みます。「イワシカラーがいいか? それともボラカラーか?」
はっきり言います。その悩み、時間の無駄です。
光が届かない闇の中で、魚がルアーの背中の模様まで見ていると思いますか?
魚は、あなたのルアーを見ていません。遠くから「聴いて」いるのです。
もちろん、耳で聴くわけではありません。魚には、人間にはない「第六感」とも言える高性能レーダーが備わっています。
今回は「側線(Lateral Line)」という器官のメカニズムを解説します。
これを知れば、夜釣りや濁りの中で「何を選べばいいか」の正解が、生物学的に導き出せます。
「側線」という名のソナーシステム
魚の体の側面、エラから尻尾にかけて、一本の線が走っているのを見たことがあるはずです。
あれはただの模様ではありません。中にはゼリー状の物質と感覚毛が詰まっており、「水圧の変化」を敏感に感知するセンサーになっています。
魚はこれを使って何をしているのか?
- 障害物の回避:自分の泳ぎが壁に跳ね返ってくる波を感じ取る。
- 群れの統率:隣の魚が動いた水流を感じて、ぶつからずに泳ぐ。
- 獲物の探知:小魚が泳ぐ時に発生する「微弱な水流」をキャッチする。
つまり、暗闇で目が効かなくても、魚は側線というレーダーを使って、周囲の状況を3Dで把握しています。
視覚(Eyes)ではなく、触覚の延長(Touch at a distance)で獲物を追っているのです。
「リアルな形」=「ステルス戦闘機」という皮肉
ここで、多くのルアーマンが犯すミスがあります。
「食わないから」といって、ルアーを細く、小さく、リアルな形状(シンキングペンシルなど)にしてしまうことです。
水を動かさないルアーは、側線センサーにとっては「透明人間」と同じです。
細身で水を逃がすルアーは、物理的に「波動」が出ません。視覚が頼りのデイゲーム(日中)ならそれで正解です。
しかし、視界ゼロのナイトゲームでそれをやるのは、レーダーに映らないステルス機を飛ばすようなもの。
魚はルアーの存在に気づくことすらできません。
逆に、ボディが太く、リップが付いていて、ブリブリと大きく水をかき回すルアー。人間から見れば「オモチャっぽくて不自然」に見えるかもしれません。
しかし、側線センサーにとっては、それこそが「強烈な存在感を放つエサ」としてマップ上に表示されるのです。
【実例】「波動」で使い分ける2つのモード
RIVOSEA的には、ルアーのジャンル分けは「ミノーかペンシルか」ではありません。「水をどれだけ押すか(Water Displacement)」で分類します。
Mode A:視覚優位(デイゲーム・クリアウォーター)
戦略:微波動(ローアピール)
魚が目視できる状況。ここでは側線への刺激はノイズになります。「水を押さない」細身のルアーや、動きの大人しいシンキングペンシルを使い、視覚で食わせます。
(「見せて」食わせる)
Mode B:側線優位(ナイトゲーム・濁り・サラシ)
戦略:強波動(ハイアピール)
視界が効かない状況。ここでは「水押し」が全てです。ボディの側面積が広いバイブレーションや、ワイドウォブリングのミノーを使います。
人間がリールを巻いていて「重い」と感じるルアーほど、水中では大音量で「ここにいるぞ!」と叫んでいるのと同じです。
(「気づかせて」食わせる)
まとめ:魚の「耳元」で騒げ
夜の海で、なかなか釣れない時。
あなたは「色が合っていないのか?」と悩み、ルアーをサイズダウンさせがちです。
ですが、正解は逆です。
「もっとうるさいルアーを投げろ」
サイズを上げて、リップを大きくして、水を大きく掻き回すものに変えてください。
「こんなに派手で大丈夫か?」と不安になるくらいで、魚の側線にはちょうどいい。
- 色は関係ない(どうせ見えていない)。
- 形も関係ない(シルエットしか見えていない)。
- 大事なのは、水中に残す「乱気流の航跡(ウェイク)」の強さだけ。
明日からのナイトゲーム、ルアー選びの基準を「見た目のリアルさ」から「水押しの強さ」に変えてみてください。
闇の中からひったくられる衝撃が、その理論の正しさを証明してくれるはずです。



コメント