魚は「壁」に張り付く。コンクリートではなく「流速差」という見えない壁に。

海の中にある壁に青物がいるアイキャッチ画像 LABO(釣りの理屈)

堤防の先端、見渡す限りのオープンウォーター。遮るものは何もない。「どこに投げても同じだろ」と諦めて、スマホをいじりながら漫然とキャストを繰り返す。

その横で、なぜか一人だけ連発しているアングラーがいる。

彼は魔法を使っているわけでも、超高額なルアーを使っているわけでもありません。

彼には、あなたに見えていない「壁」が見えているだけです。

魚釣りにおいて「ストラクチャー(障害物)を撃て」というのは基本中の基本。テトラポッド、杭、岩陰。

でも、本当に上手い人は知っています。

「水そのものが、最強のストラクチャーになる」ということを。

今回は流体力学の基本、「流速差(Velocity Difference)」の話をします。これを理解すれば、何もない大海原が、迷路のように入り組んだ「構造物」に見えてくるはずです。

魚は「サボりながら食べたい」ワガママな生き物

まず、魚の気持ちではなく、「エネルギー効率」を考えてください。

激流のど真ん中に居続けるのは、人間で言えば「台風の中で立ち続ける」のと同じ。体力を激しく消耗します。

逆に、流れが全くない淀み(よどみ)には、エサが流れてきません。

  • 速い流れ:エサがたくさん流れてくる(ベルトコンベア)
  • 遅い流れ:体力を消耗しない(ベッドルーム)

魚にとっての理想郷はどこか? 答えは一つ。

「速い流れ」と「遅い流れ」が接する、境目(Boundary)です。

この境目こそが、流体力学的な「見えない壁」です。

魚はこの「壁」の、流れが緩い側にぴったりと張り付きます。そして、隣の「急流」というベルトコンベアに乗って流れてくるエサを、最小限の動きで捕食しているのです。

「潮目」の正体は、衝突によってできた「壁」である

海でよく見る「潮目」。海面に泡が溜まっていたり、鏡のようにツルッとしていたりする、あのラインです。

「潮目は釣れる」と誰もが言いますが、その物理的な理由を答えている人は少ない。

あれは、「異なる方向・異なる速度の流体同士が衝突している現場」です。

水と水がぶつかると、行き場を失った水流は下へ潜り込んだり(ダウンウェル)、湧き上がったり(アップウェル)します。つまり、そこには巨大な「水の壁」が発生しています。

プランクトンは遊泳力がないため、この「壁」に押し付けられて溜まります。

それを追って小魚が集まり、さらにそれを追って青物が回遊してくる。

アングラーが狙うべきは、漠然とした「沖」ではありません。この物理的な「衝突壁」のキワ、一点のみです。

【実例】川も海も、狙うべきは「ヨレ」だけ

RIVOSEAの鉄則、「川と海は同じ」を証明しましょう。

Case 1:渓流の「岩裏」

川の真ん中に大きな岩があるとします。岩の裏側には、水が巻いている場所(反転流)ができますよね。

本流は激流。岩裏は緩流。

ヤマメは決して激流の中にはいません。「本流と反転流の境目(シーム)」という、厚さ数センチの「壁」に張り付いています。

ルアーを投げるべきは、岩の裏ど真ん中ではなく、この「境目のライン」を通すこと。これがドリフトの極意です。

Case 2:サーフの「離岸流」

広大な砂浜。どこを狙えばいいか途方に暮れる景色です。

でも、波が崩れる場所をよく見てください。一箇所だけ、波が立たず、沖に向かってザワザワしている場所があるはずです。

それが離岸流。ここにも強烈な「流速差の壁」があります。

ヒラメやマゴチは、砂に埋まっているようで、実はこの「流れの壁」に寄りかかってエサを待っています。

まとめ:海面に描かれた「地図」を読め

コンクリートの堤防やテトラポッドは、誰にでも見える「目に見える壁」です。当然、プレッシャーも高いし、魚もスレています。

しかし、水流が生み出す「見えない壁」は、刻一刻と位置を変え、誰にも所有権がありません。

「何もない海だな」

そう思った瞬間、あなたは負けています。

目を凝らしてください。

  • 風とは逆方向にさざ波が立っているライン
  • ゴミや泡が一直線に並んでいるライン
  • ルアーを巻いた時、急に「重く」なるゾーン

そこには間違いなく、巨大なストラクチャーが存在しています。

明日からは、ルアーの色を変える前に、「投げる角度」を変えてみてください。
リールを巻く手がフッと重くなったその場所こそが、魚たちが集まる「見えない壁」の入り口です。

魚は水の中にいます。だから、水の形(=流れ)を読む者が、最強のアングラーなのです。

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